LEMAIRE FABI製 双眼鏡
祖父が使っていた双眼鏡がいつ頃のものか調べてみた。
一般社団法人日本望遠鏡工業会のホームページで同様の双眼鏡を見つけることができた。
ホームページに「双眼鏡は、極初期にはガリレオ式望遠鏡を二つ並べた複式望遠鏡として開発され、19世紀に普及したと言われています」とあり、1868年(慶応4年)に使われた双眼鏡から、「東京オリンピック、札幌オリンピック」公式モデルまでの写真を掲載している。
「発明は1608年。1613年にジョン・セーリスという人が徳川家康に望遠鏡を贈っている。国産レンズは藤井レンズ製造所が1900年頃に英国製の双眼鏡を入手し1911年に製作」(ホームページから抜粋)
祖父の双眼鏡は「1917年前後(大正初期)第一次大戦時代のヨーロッパの双眼鏡」として載っており、「幕末時代の双眼鏡として紹介したものと同じLEMAIRE FABI(フランス)製の双眼鏡」とある。
この会社は今も双眼鏡を製作している老舗のようだ。
祖父の思い出
100年ちょっと前の双眼鏡を100年以上前に生まれた祖父が使っていた。
祖父は戦時中、華中鉄道で働き、晩年は魚屋を営みながら詩吟などを教えていた。
80歳を過ぎて脳の手術をする際は、ストレッチャーに横たわる祖父に、これが最後になるであろうと皆で別れを告げた。祖父の瞼から涙が零れ落ちたのを覚えている。
手術は成功したが半身不随、言語障害が残った。しかしメキメキと回復し、退院直後に保険屋の集金のアルバイトで、自転車で山越えなどをしていた。「車にぶつかったりしたら運転手に迷惑がかかるでしょう」などと娘に叱られていたが、その逞しさに憧れた。
その後、再び入院した際には、病院を脱走してはトンカツを食べていた。その甲斐あってか、10年ほど元気に生き生涯を閉じた。棺には大好きだった大きなトンカツを入れた。
明治生まれの祖父は何を観ていたのだろうかと、今、60年以上前に生まれた男が、皮のストラップを首にかけては、窓の外を眺めている。
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