不思議なご縁(追記)

文学

2月17日に静岡駅南口で白杖の青年に会った。翌日、そのことを地方新聞に投稿したら、3月6日に掲載された。

ー「白杖の人を補助 温かさが残る」ー

 静岡駅南口・ロータリーの交差点で、白杖で辺りを探りながら歩く若い視覚障害者の方を見かけました。点字ブロックの上に工事車両が乗り上げていて難儀していたので、静かに声をかけ一緒に歩くことにしました。

 私の左肩に手を置き、少しすると「自分で歩くから後ろにいて危険があったら知らせてほしい」と言われました。仕事に行く途中であることなどを話してくれました。次の交差点で信号が赤になるとピタリと歩みを止め「赤ですね」と言うので、どうしてわかるのか尋ねると「左側の車が動いていない」と言いました。

 最後の交差点からは白杖で距離を確認し、職場があるビルに到着。入り口に大きな段差がありハラハラしましたが、「ありがとうございました」と言ってビルに入っていきました。

 それから一日がたちましたが、左肩には彼の手の重みと温かさが残っており、救われたのはむしろ私の方だったと感謝しています。

こういう投稿で、タイトルは新聞社がつけてくれた。

それから1か月以上経った3月24日に、再びその青年を見かけた。

「おはようございます。またお会いしましたね」と声をかけると、「Kさんですね」と私の姓を呼んだ。

驚いていると「新聞に投稿してくれたんですね。あの時はありがとうございました」と言われてまたびっくりした。

「お父さんが新聞を読んでくれました。お父さんとKさんの名前が同じです」と言った。

「私も投稿したので、載ったら読んでください」と言ったので、青年の姓を教えてもらった。

それから時間が経ったが、彼の投稿はまだ目にしていない。

3度目に会ったのは4月7日だった。挨拶だけして「今日も後ろから見ていますね」と言って、後をついていった。

あまり話しかけると、周囲の音の確認が難しくなることがわかったので、静かに見守るだけにした。

その数日前に、彼と同じ職場で働いているであろうご婦人を見かけた。盲導犬が好奇心旺盛のようで、刺激的なものがあると興味を示して進路から外れるのだ。

「反対側に歩き始めましたよ」と声をかけ、そこから後ろをついていった。

これまで人の役に立たなかった自分にもできることがあることを知り、幸せを感じるようになった。

出勤する楽しみが一つ増えたのもよかった。

加筆(2025.4.18)

今朝の新聞に、白杖の青年のお父さんの投稿が載っていた。

私の投稿に親子で涙したと書かれており、視覚障害者が日々苦労されていることに胸が痛くなった。

その後も青年には会い、朝の挨拶の後「今日も後ろを歩きますね」と声をかけ、職場の前で「じゃ、またね」と別れている。

今週の月曜日は、そこに別の女性が加わった(彼女は私が彼を後ろから見守っていることに気づいていなかった)。

お父さんの投稿で、彼が色々な人に声を掛けられていることを知ったが、彼には周囲がそうしたくなる何かがある。

彼には人を幸せにする力が備わっているのだ。

コメント

  1. ちんねん より:

    とても素晴らしい体験をしましたね。
    なかなか出来る事ではないと思いますが、ほんとちょっとの勇気と決断が出来れば、誰でも人のために行動出来ると改めて感じました。
    自分もこの様な機会に出くわしらた、チャレンジしたいと思いました。
    素敵なお話をありがとう。

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