ビール1本160円の食堂 12月6日

カメラ

友達が若い頃経営していた食堂の写真を見せてもらった。「60年くらい前かな?」と言っていたから私が生まれた1960年頃だろうか。

「ビール1本 通し付 大160円」とある。ビールの価格は、その頃125円くらい。

「アサヒビール 缶入り 100円」。アサヒグループホールディングスのホームページに「1958年9月 日本初の缶容器入りビール『アサヒゴールド』を発売」とある。スチール缶の底には「専用の缶切りで大きなアナを二ツあけてそのままじかにお飲みください」と書かれていた。75円。

「カツ丼120円」「天丼100円」「カツライス140円」「玉子丼90円」「カレーライス100円」

「焼酎40円」「ウイスキー30円」「オーシャンポケットウイスキー120円」

厨房側にもメニューがある。

「玉子うどん50円」「とりうどん50円」「月見うどん50円」「めし40円」「お酒一合70円」

壁に貼られたポスターはプロ野球選手だろうか。

そこにタイムスリップしてみる。

刺身をつまみながらまずは瓶ビールを飲む。30をちょっと過ぎたあたりの女将をからかってみたが、忙しくて相手にされない。仕方ないので「月見うどん、酒熱燗一合!」と大きな声で言うと、やっと返事をした。うどんの汁を飲み干した後、〆にと目新しい缶入りビールを注文し、大きな穴を開けてグビグビやり始める。

店内は地元の人のみならず、観光客らしき人も静かに座っていたが、突然、中年の紳士が椅子から転げ落ち、胸に手を当てて苦しそうにもがき始めた。すると偶然そこに、運送業を営む女将の夫が仕事の休憩中に店に立ち寄り、苦しむ紳士を車に運び込み病院に車を走らせていった。

後段の紳士の話は実話である。命拾いした紳士と女将夫婦はその後家族ぐるみの付き合いになり、紳士は命の恩人である女将の夫に息子の仲人をお願いした。紳士は清水市内で和菓子屋を営んでいたが、その後亡くなり、現在はその息子が元女将のところに和菓子を届けにやってくる。私はその美味しい芋羊羹をおすそ分けいただいたことがある。

女将のご主人も数年前に亡くなったが、運送中に遭ったトラブルの話は面白い。

新三菱重工業が製造・販売していた中型トラック「ジュピター」を新車で購入して早々に、御殿場で荷崩れを起こしてしまったそうだ。

重い木箱を積めるだけ積んだのだろうけれど、そりゃ崩れるよなぁと思うほどの高さである。

連絡をもらった女将たちは、御殿場に急行したそうだが、運転手たちは一体何時間この状態でいて、その間何をしていたのかと想像を膨らませる。

のんびりとした時間の流れの一方で、色々なものがダイナミックに躍動し、皆が未来に希望を抱いていた時代を感じて、なぜか羨ましく思うのである。

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