生の胡桃を口に含む

料理

10年ほど前に通勤途上にある花屋で胡桃の苗を買った。

職場の机の上に置いて、パソコン作業の合間に葉を眺めて目を休めていた。

しかし一向に大きくならず、家に持ち帰り、少し大きな鉢に植え替えた。

それでも成長の速度は遅々としたもので、3年前に地に植えた。するとあっという間に大木になった。昨年フェンスのちょっと上くらいで切りそろえたのに、それ以上に伸びている。

6月中旬、ふと見上げると実が成っているではないか。

しかし、胡桃の実がどのような経過を辿りいつも食べているナッツになるのか、頭の中で結びつかない。

調べてみると、生で食べられることがわかった。

皮が熟さないうちに収穫する、とある。

三つあったが一つ見当たらない。まさか熊が食べてしまったのかと一瞬考えたが、熊なら三つ全て食べてしまうはずだ。

一つ皮を剥く。

水に数時間漬けるとタンパク質消化を妨げる物質を取り除くことができるというので、一晩冷蔵庫の中で漬けておく。水に色がついたのがその目印になるらしい。

種と皮を切り離す。

胡桃を生で食べるなんて、育てている人にしかできないことだ。また一つ貴重な経験ができる。

まだ家族は起床していない。私がこんなに楽しいことをしているとは、夢にも思わないだろう。

思わず顔がにやけてくる。

恐る恐る口に含み、果肉を噛む。

う!

口の中全体がしびれるではないか。食べ物のまろやかさはなく、まるで薬物の強烈な刺激だ。吐き出して口を注ぐ。

何か大きな間違いをしたのだろうかと、再度調べる。

炒ると香ばしく美味しくなるとある。塩などで味付けするのか…ふふふ、今度こそと一片を口に含んで噛む。

火が完全に通っているところは刺激が無くなったように思ったが、それでも口の中がしびれる。

吐き出して口を注ぐ。

残念な経験だった。

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