青島蘭秀の掛け軸 12月31日

懐かしい時を求めて

商売を営んでいる友達が掛け軸を捨てるというのでいただいた。捨てるのはいつでもできる。貴重なものが消滅してしまうのは社会にとって大きな損失だと思う。

大黒さんと恵比寿さん。米俵の上に座り袋を担ぐ大黒さんは農業や縁結びの神様で、釣り竿を型に掛ける恵比寿さんは漁業や商売繁盛の神様らしい。

上手に描くものだと感心。「蘭秀」と書かれている。

青島蘭秀のようで、知人の学芸員に尋ねたら、藤枝市の学校で教師をしていた人らしいと教えてくれた。

生没年はわからないが、蘭秀の子で日本画家の青島淑雄(ひでお)が1932年(昭和7年)に生まれており、昭和の初め頃に描いた絵ではないだろうか。

この掛け軸をくれた友達は、近所に住みベレー帽を被った蘭秀をよく見かけたという。

学芸員の話では、「この掛け軸は、大井神社の縁日に販売したものではないか。蘭秀と子の淑雄の二人で描いたものも販売したようです」とのことだった。

友達はこの掛け軸を親しい知人にもらったと言っていたので、大井神社の縁日でその知人が買ったのだろうと想像したが、掛け軸を見ているうち、そこに友達の家名が書かれていることに気がついた。「為M家 蘭秀謹寫」…M家のために蘭秀が謹んで写した、という意味であろうか。

買ったのが誰であろうと、友達M家の為に描かれたものであり、商売繁盛の神でもあることから、友達にその旨伝えて返却しなければならないと急いで連絡した。すると「そんなはずはない。返却不要」との返事。

私は、近所に住む蘭秀が友達M家の為に描いたものだと思っているが、大黒さんと恵比寿さんが我が家にやってきたのだから、きっと良いことがあるに違いないと壁に掛け、新しい年を迎えることにした。

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