もうひとつの酒の楽しみ方

昨日から革細工を教えてもらうことになり、先生が「酒はもう飲まないから」と漆器をくれた。

松田権六の下で仕事をしていた佐藤阡朗(さとうせんろう)という人の作品とのことで、革を縫い上げる作業に集中していたせいか、松田権六という名前にピンとこなかったが、帰りの車中でハッと気がついた。

人間国宝の松田権六であった。

その人の下で仕事をしていた人だから、見た目は普通の漆器のようだけど、何か違うに違いないと使ってみることにした。

休肝日の予定だったが、やむにやまれぬ事情のため、器に相応しい酒「臥龍梅 純米吟醸」1,698円(4合)を注いで漆器に口を触れた。

口で感じる薄さや温もりは陶器とは違い、木でできているため軽くて何かを手にしていることすら感じず、まるで宙に漂う雫を、そっと指先ですくって体に注ぎこんでいるような感じがした。

では他の漆器と比べたらどうだろうか。

左が山中漆器で中央が佐藤阡朗。右は買った木地に私が漆を塗ったもの。

左の山中漆器も私のと比べたら随分と薄いが、佐藤阡朗漆器とは比べようもない。

そしてもう一つ気がついたのは、漆器の外側への広がり、角度である。

佐藤阡朗漆器は、漆器の縁と唇がどちらからともなく自然と触れ合う感じで、エロティシズムすら感じてしまう。

凄いことに気がついてしまった。

「高台の猪口って高いのよ」と先生が言っていた。

飾っておきたいけれど、正しくこれは使う器だ。

諸事鈍感な私にも、佐藤阡朗の凄さがわかった。

器に相応しい酒を探す楽しみもできたが、休肝はいつになるのだろうか。

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