原因不明の耳の病気
妹の耳の片方には始終不快な音が聞こえる。「ブクブク」「ボコボコ」「ゴゴゴゴ」が連打する。
本人曰く「耳鳴りには2種類ある。本人にしか聞こえない『自覚的耳鳴り』と聴診器をあてると他人にも聞こえる『他覚的耳鳴り』。割合は90%と10%。私は後者」「左耳を枕につけて寝る体制にすると止まる。首を45度に傾けると止まることもある」
かかりつけ医のみならず、大学病院も受診したが病名も原因も不明で、ついに首都圏へ針治療に出かけることになった。脳の病気でも何でも、原因がわかったほうがよほどかスッキリする、調子の悪い耳は聴力を失ったほうがよいかもしれないとさえ言う。
慣れるよう、気をそらすよう努めているが、頭の中で花火が鳴っている状況が続いており、鬱になりそうだと。
私の子どもたちとその配偶者は医療従事者で、それぞれ考えを述べてくれる。医療関係の友達も懇意の医師に聞いてくれるという。どうなるかはわからないが、家族、友達に感謝する。
飛蚊症
体調不良が精神に及ぼすマイナス状況は私にもある。私の場合は「眼」。
長年の事務仕事で酷使したのが原因だと思う。根拠はないが眼には自信があっただけに、余計に気持ちが塞ぐ。
半年に一度の眼科定期健診は続けている。眼科に勤務する知人に勧められ、先日は別の眼科医からセカンドオピニオンを得た。しかし「飛蚊症は治らない、慣れるしかない」と同じことを言う。ほんとうにそうだろうか。
「飛蚊症とともに ~私達の闘いの日々~」徳野善幸ほか,パレード,2014には、私から見ても重度の方々の闘病生活が記されている。いずれ私もそうなるかもしれないと想像したら、気が狂いそうになった。時間の経過とともに少し慣れてきたが、パソコンを長時間使う仕事に就くことはもうできないのではないかと思う。
民間療法の本を何冊も読み、加温やマッサージを試し、サプリメントを飲んだりしている。しかし偶然手に取った眼科医、深作秀春氏の本を読み、民間療法には、かえって眼に害があるものもあることを知った。いつか深作医師の診察を受けてみたいと思うが、診療所は首都圏にあり、3か月待ちの状態だと聞いた。また、氏の本にさえも飛蚊症の治療については書かれていないため、「慣れるしかありませんんね」という結果を予測してしまう。
飛蚊症よりも重篤な病、難病により、生きるか死ぬかの状況にある人の治療や病の研究が優先されるべきだが、世の中に一人くらい飛蚊症治療のスペシャリストが情報発信してくれてもいいのではないかと思う。
病気は他人にはわからない
5月19日東京新聞一面に、コロナ後遺症に苦しむの28歳の女性が載っている。特に疲労感・倦怠感がひどく、仕事が続けられなくなってしまったという。恋人と別れ、家族からの気遣いが減り、理解してもらえない孤独に陥っている。
病はひとそれぞれで、おそらく他人に「わかる」ということはないだろう。しかし、そこに耳を傾け、時々であっても共感してくれる人がいるいないでは全く違うと思う。パートナー、家族、友達。その数の問題ではなく、近くに一人でもいれば、病となんとか付き合っていけるのではないか。根本的な解決には至らないかもしれないが、妹には心配してくれている人がいる。
視覚に制限される聴覚
「琵琶法師 -<異界>を語る人びと」兵藤裕己,岩波書店,2009に、「私たちの意識の焦点は、ふつう目が焦点を結ぶところに結ばれる。耳からの刺激は視覚によって選別され、不要なものは排除または抑制される」とある。
漆塗りに集中している時、飛蚊症のことはほぼ忘れている(私の飛蚊症は眼球を動かす時に強く意識される)。少し前、近くで落雷があり家族で話題になったが、その音を聞いた記憶が全くない。その時間は漆を塗っており…しかし、落雷の音を排除してしまったというのは自分でも納得できない不思議なことである。
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