遠藤周作が「生き上手死に上手」文春文庫,1994で、病気の時は苦しくって、苦しくって仕方がないが「病気の時でも不幸な時でも、これを『利用して何とかトクすることはあるまいか』と考える」「病気や不幸をユーモアにしてしまうやり方を考える」と言っていた。
うん、そうだと思って生活し、やっとそういうことができるようになってきた。
遠藤周作のような「苦しくって、苦しくって」という状況は今はないが、その態度を精神に浸透させるには、小さな苦しみを重ねる中での実践が役に立ったと思う。
実家の庭の手入れをした後、腰に筋肉の張りを覚え、翌日痛みに変わり、2日後に歩行困難になった。
腰は「身体の要」と書くだけあって、健康を損ねると、その重大さは深刻である。
電車通勤に不安を覚え、在宅ワークにさせてもらった。電車や駅で立ち上がれなくなり、病院に救急搬送される姿を想像した。
布団を敷いて、隣の書斎の椅子に座り、ウエブで会議に出席した。便利になったものだ。
一旦横になると起き上がれなくなりそうで、昼食時を除いて終日椅子に座って仕事をした。布団は必要なかった。
翌日も書斎で半日仕事をし、残り半日は横になって読書をした。横になってやれることといったらそれくらいだが、読みたくて取り寄せた本が山のようにあり、そのうちの一冊を手に取ると、すぐにその世界に入り、現実は消えた。読み終えて次の本を手に取る。体を動かすと腰に激痛が走るが、じっとしていれば、別世界を生きることができる。至福。
予約した床屋に行くことも困難。そうだ、バリカンを買って自分で髪を整えることができないだろうかとネットでバリカンを探す。アマゾンの口コミには、他人が開封した商品が届けられたというものがいくつもあり、私にも経験があるので、アマゾンは止め実店舗のノジマ電気で買ってきてもらう。実店舗は対面販売上、販売する商品にはある程度の責任を負わなければいけないため、仕入れる商品を一定の基準により選定していると、勝手に思っている。多少割高であっても騙されるよりはいい。
バリカンは床屋代1回分の価格だった。自分で髪を整えることができれば、時間も費用も節約でき、そういう暮らしに努めれば、労働から解放される日も近い。
横になっている方が楽なので、食後は早々に布団を敷く。そこでまた読書をする。寝る前に読む本は、須賀敦子がいい。彼女も無類の読書家で、幼い頃、若い頃の瑞々しい心の動きを失わずに最後まで生きた。単行本で少しずつ読み進めているが、いずれどこかで全集を手に入れ、そこでじっくり再読したいと思っている。
現実の世界の人とのつながりがなくなった晩年を、世界中の色々な人の世界に触れることで楽しんでいる。
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