陶芸・水滴

懐かしい時を求めて

陶芸の面白さに造形の自由がある。

漆芸でもある程度可能だが、主に木材に漆を塗ることからすると、粘土での造形に比べ限定される感じがする。

何をどんな形にするか、それをどのような色や模様に仕上げるか、組み合わせは無限であり、表現の世界が大きく開かれている。

陶芸教室の先輩と話をしていて、書道で使う「水滴」をつくったらどうかと言われた。

私も毛筆でひらがなを練習していて、教科書に陶器の水滴の写真が載っていたのを思い出した。そういうものがあれば素敵だなと思ったけれど、それを自分でつくるという発想は、その時はなかった。

水滴は小さいゆえの難しさもある。いったいどうしてつくったらいいのか、何日も眠りにつく前に考えた。

陶芸の基本は「手びねり」といって、ひも状にした粘土を土台の粘土に指でひねって圧着して積み上げる方法であるが、今回はそれをせず、上面以外は一度に粘土をこねてつくってしまった。

前の写真の茶色と鼠色の水滴は、粘土が異なる。茶色はテラコッタという粘土で、教室の先生からいただいたものである。水分の含有量が多く、乾燥に時間がかかるため慌てなくていいのがメリットの一つだが、なかなか固まらないので、次の造形に入るのに待たなければならない場合がある。

もちろん粘土の色が違うので、同じ釉薬を掛けても色は違う。

注ぎ口の筒は、茶色の方は、粘土の固まりに棒を突っ込んで穴を開けた。鼠色の方は、棒に粘土を撒いて筒を作り、本体に接続した。後者は接続が弱いので、粘土の中に空気が入っていると、焼いた時に割れる可能性がある。

鼠色の水滴本体の出っ張りは、細い紐をつくって練り込んだ。

どの釉薬を使おうか。私の教室では、数十種類の釉薬が使いたい放題である。それも自分で自由に掛けることができる。こういう教室は他にはほとんどないのではないか。概ね月に1,000円払っている勘定だが、追加の粘土は1㎏300円で買え、釉薬使用と焼くのは無料で超お得である。

この小さな鉄器は、5年ほど前に東京で行われたフリーマーケットで買ったものである。

南部鉄器のミニチュアでただのオブジェだと思っていたが、今、これが水滴であることがわかった。

ネットで調べると同様のものが売られていて間違いはなさそうだ。

ルーシー・リーばかりでなく、柳宗悦、河井寛次郎の本を棚から引っ張り出し、造形の美しさを再認識しているところである。

美しいものを見ると欲しくなる。買えないから諦めていたけれど、自分でつくればいいと思うようになった。

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