鮎 ドブ釣り 7月12日

懐かしい時を求めて

釣りの先生の家庭に不幸があり、この夏、鮎のドブ釣りを体験する機会はなくなったと思っていた。なので借りた3冊の本も、必要なところだけざっと目を通し、仕掛けなどの細かいことは来年までに覚えればよいとのんびりしていた。

そこに電話が入り「私は四十九日の法要が終わるまでは釣りに行けないが、人を紹介するから是非この夏に一度試してもらいたい」とのこと。のんびりムードが一転して引き締まった。

老舗喫茶店の涼

先生を車に乗せ待ち合わせの喫茶店に行くと、店内は広くエアコンが効いていて、席が沢山あり、平日の午後2時30分だというのにそこそこの人がグループで集まっている。

猛暑が始まり、家の中にいても扇風機では涼をとれない。かといって昼間からエアコンを使っていたら電気代がいくらになるかわからない。わずかのガソリン代とコーヒー1杯の値段でこういう場所で過ごすのは、生活の知恵だなと感心した。

高齢者のコミュニティ

見渡せばほぼ全てが高齢者だ。それも私よりずっと上の年齢の人たち。釣りの先生89歳、紹介されたMさんは80歳くらいだろうか。平日昼間の高齢者コミュニティに、ついに私も参加することになり、感慨深いものがあった。

高齢の人のそばにいていいなぁと思うのは、私もその人の年齢まで健康でいられると安心できるからである。錯覚かもしれないが、あと30年は大丈夫だと思うと、心のもちようも変わってくる。そして90年も生きて来た人からは何かしら学ぶことがある。

釣りグループの竿頭 Mさん

Mさんは静岡市の人で、今でも仕事をしており、毎日ぶらぶらしている自分が急に頼りないものに思え「漆をやっておりまして…」などと言い訳にもならないことをぼそぼそ話す始末だった。

「昨日は神奈川の釣りの大会に参加した。初めての川だったのでポイントがわからなかったが入賞した」という。入賞の景品を私にくださった。Mさんは釣りの先生のグループの「竿頭」というだけあって流石だ。

「すぐにでも釣りに連れていってください」とはっきり言えなかったのは、釣り場・川が伊豆の狩野川だったからで、そんなに遠くまで車に乗せていってもらい、道具を借り体験することは、軽い出来事とは思えなかったからである。

釣り道具

今シーズン2~3回の釣行は道具を借りたとしても、来シーズンともなれば、やはり揃えなければならないだろう。「なぁ~に、中古の竿なら10万円くらいでもありますよ」と言われても、無職の身では買えるはずもない。そうすると途中で止めることになり、それこそが関わってくれた人への最大の裏切りのように思え、最初の一歩は非常に重いのである。

「貴方は考え過ぎだよ」と言われ話の続きを聞く。

鮎のドブ釣り

鮎には「ドブ釣り」「友釣り」があり、昔ちょっとだけ「友釣り」をしたことがあった。川釣りは車をどこに止めるのかといった些細な事からして初心者には難易度が高いため、その後は海釣りばかりすることになった。海であれば簡単な仕掛けでも釣れることがあるので、子どもたちを楽しませることができた。

調べてみると、川の淵に溜まった鮎を毛鉤で釣る「ドブ釣り」は、衰退の一途を辿っているようだ。川が変わってしまい淵が少なくなっているのが要因の一つという記事があった。

日本鮎毛バリ釣り団体協議会のホームページにも、深刻な状況が書かれている。ただ、「協議会の会長には娘がいて、まだ40代で毛バリも作っているから無くなることはない」と先生たちが言っていた。「13団体620名の会員」とある。

川で遊ぶ

思い返せば釣りバカだった40代は、子育てと重なっていて幸せな時期だった。川で遊ぶ、海で遊ぶ。釣った魚をさばいて調理する。家族で食卓を囲む。

あの時代の幸せを少しでも味わえるのなら、飛蚊症さえ悪化しなければ、何もたじろぐことなないと思えてきた。誘われた時にすぐに家を飛び出せるよう、使える道具を倉庫から出しておこう。魚が良く見えるよう、目がこれ以上悪化しないよう、変更グラスを買っておこう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました