浮世絵を観る 9月11日

懐かしい時を求めて

友達から「浮世絵に興味があるか?」と聞かれ、ないこともないのでみせてもらうことにした。浮世絵を持っているのは友達の知人で90代のご婦人だった。ご主人が収集したものを、ご主人が亡くなった後多くを処分し、残っているものをみせてもらった。

最初に面白いと思ったのは、妖怪の浮世絵。江戸時代の歌川国貞(1786-1865)という人の作品。少し虫が食っているが、150年前のものであれば仕方ないか。妖怪の面白さもさることながら、着物のデザインの細かさに眼鏡を外して見入る。

次に面白いと思ったのは歌川広景(1854 – 1868)の作品。侍が乞食に小便を掛けているらしい。

歌川広景は3年に満たない創作活動だったようだが、その作品は「ヘンな浮世絵」という本に集められている。武士の顔の表情が面白い。

壁にかかっている版画が気になった。私が住んでいる町を描いた絵とのことだった。川瀬巴水のようだなと思ってサインに顔を近づけると「○水」と記されている。水は巴水の水だろうか…そんなことはないだろうなと思いながら家に帰り、別冊太陽に掲載されている巴水のサインと比べてみたら同じだった。巴水なのだ。本物を観られたことに不思議な縁を感じた。

巴水は水辺の風景を多く描いていて、この作品は色目もちょっと地味な感じがするけれど、もしかしたら手前は水田なのだろうか。樹木の反射が描かれているからそうなのかもしれない。

最後の浮世絵の女性が、誰の作品なのかわからない。聞けばよかった。部屋に飾っておいたら面白いだろうなと思った。

数十枚の浮世絵をみせていただき礼を言って退出したら、玄関の外で猫が番をしていた。飼い猫ではなく野生なので、手を出すと危ないと言われ、なるほどと思った。スマホをちょっと近づけただけで威嚇してくる。高齢のご婦人を護っているつもりなのだろう。頼もしい感じがしてご婦人宅を後にした。

今後、これらの浮世絵が経済的価値ではなく、ほんとうにその絵が好きな人に渡っていけばいいと思ったけれど、おそらくそういうことにはならないだろうと思い、少し寂しい思いをした。

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