体調は少しずつ良くなっている。そう思いたい。妻の方が後遺症に苦しんでいるが、気丈にしているのを見ていると、これではいけないと笑顔を試みる。
妻も退職し、毎日家族3人揃っている。曜日間隔は薄れたが、ゴミ出しの曜日は重要事項なので、なんとか消えることのないよう「今日は日曜日ですね」と呟いてみたりする。
オー・ヘンリーの短編集を読んでいて、ますます冷たいビールとカクテルに喉を鳴らす日を心待ちにするようになった。空調の効いたバーで、海水浴客が去った海岸のさざ波を眺めながら冷たいビールを飲む。キリンやサッポロではなく、ビンに直接口をつけて飲むビールがいい。知らない国のビールならなおいい。
そのバーでランチビールを飲むのはその日が3日目くらいで、バーテンダーとも少しだけ個人的な話をするようになっている。最初の私の印象でカクテルを作ってもらう。ふん、なるほど。次に、今のイメージで作ってもらう。ふんふん、そういうふうに私のことを見ていましたか。では、貴方を自己紹介するカクテルを作ってもらいましょうか。ほぅ。
そんなことを考えながら、一昨日と昨夜、ノンアルコールビールを喉に流し込んでみた。回復している。発熱後11日間、アルコールを口にしていないが、想像の中で飲めるようになっただけでも凄いことではないか。多少のアルコールは健康回復の助走になる可能性がある。
昔読んだエドガーケーシーの本に、健康回復のためにタバコを進めるシーンがあった。エドガーケーシーは無学でありながら、トランス状態になると医師の霊が乗り移り、外科手術までこなした人である。その臨床記録は膨大な量が残されており、死後、財団が形成された。もっとも本人は、自分がやったことではないからと、生涯つつましい生活を続けている。タバコも人によっては益になることがあるのだと、強く印象に残っている。
「冷たいビールとカクテルはどこで飲むの?」と妻が尋ねた。「う~ん、そうだねぇ。味覚が戻ったら一鮮に行こうか」と馴染みの店の名が口を突いて出た。海岸沿いのホテルのバーの楽しみは別の機会にとっておくことにしよう。
コメント