母が急性期病院から回復期病院に転院して6日が経った。
面会するたび驚くのは、その回復力と根本にある生命力である。
1月初旬、人工呼吸器を装着し、医師や家族と延命治療について話し合ったことが遠い過去のように感じられる。
福祉タクシー
先週の転院。福祉タクシーの人の優しさに、私達は幸せだなと思った。母は久しぶりの車窓の風景に目を輝かせたが、すぐにウトウトし、私は運転手との会話を楽しんだ。
10月に開業したばかり。個人事業によるものは、市内でそこだけとのことだった。
開業前は、自動車の整備士をしていて、会社の経営が厳しくなったのを機に転職。大好きな車で人の役に立てる「福祉タクシー」に思い至ったという。福祉関係の資格を取得して万全の準備をした。
車やバイクに関する知識・経験は他を凌駕して圧倒されたが、書かないでおく。
回復期病院到着後も荷物を持つ私を気遣い、院内でも福祉タクシー所有の車椅子を優しく押してくれた。「次の仕事まで時間があるから、病院の車椅子への乗り換えは急がなくていい」と言われたが、申し訳なく思い、そこそこの時間で乗り替えた。素敵な人に会えた。ちなみに料金は見積りどおりの8,500円だった。
医療スタッフとの面談
医師の診察後、リハビリについての説明があった。
話しがちょっと変だなと思ったら、「診療情報提供書」を医師に渡し忘れていたことに気がついた。
2か月のリハビリ計画と聞き、母には1か月程度と話していたので、訂正しないといけないと思った。
リハビリの主任が娘の夫であることもついていた。以前別の娘が働いていた病院であり、大勢の後輩や妻の友達が声をかけてくれ、賑やかな面談になった。
孫の情熱
私の面会は週に2回。妹も同じくらいだが、甥(妹の子)は毎日である。
17時までの面会時間に間に合うよう、仕事は早番に変更し、高速道路を使っている。
リハビリの様子を見学しながらメモを取っていると聞き、一体何のためなのか、甥に尋ねた。
「91歳でリハビリって、僕が想像する以上にめちゃめちゃハードだと思うんですよ。リハビリを見学しておばあちゃんが頑張っている姿を目に焼き付け記録しておくことで、自分がこの先大変だったり苦労することがあった時に、へこたれちゃいけない、踏ん張らなきゃって思えるように。おばあちゃんは僕の動く教科書です。おばあちゃんの背中から何かを感じたくて会いたくなります」
そう言われたら何も言えなくなってしまった。
専門家
病室に入っていくと、ちょうどリハビリの最中で、20分程眺めていた。理学療法士だろう。
優しく根気よく話しかけ、体の部位を動かしている。これが専門家なんだと感心した。
終了すると母の顔は上気し、血の巡りがよくなったせいか会話はスムーズで、入院前と変わらない。
体を起こすのに介助を必要としたが、背もたれがない状態でしばらくベッドに座っていることにも驚かされた。
歩行のリハビリについて尋ねると「両方の手すりで体を支えて歩いているだけだから大したことないねぇ」などと言う。5日でここまで回復するのであれば、入院前よりも良くなるに違いないと期待する。それが2か月続けば…、オリンピックに出場できるのではないかと馬鹿なことを考えた。
急性期病院退院にあたり、家に帰りたい母の気持ちを最優先しようとしたが、それに待ったをかけたのは、医療関係の資格を持つ娘たちだ。彼女達の助言がなければ、母の寝たきりになる日は近かったと思う。
専門職の娘たちには、ほんとうに感謝している。
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