漆を塗った湯呑を何日も眺めていたが、木目の美しさはあるものの面白みに欠けると思い、点描画を描くことにした。
子どもたちが小さかった頃の写真をトレースして器に転写する。そこに色漆で点を連ねていく。
この手法により自分らしさを表現できるのではないかと希望を持った。漆が塗られる順番を待っている他の木地を眺めていたら色々な絵が浮かんできた。重箱の下側は海を、上側は陸を、蓋に空を描いてみよう。大変な作業だけれど、完成したら面白い。
一方で、オーソドックスに汁椀に漆を塗ることもしていて、今、呂色漆を塗り重ねているが、新たに拭き漆だけで仕上げたい衝動に駆られ、下地を塗った。
下地を塗る前の段階で、木地がどれだけきめ細かく整えられているかが大事なことを学び、1500番と3000番のサンドペーパーで研いでから生漆を塗った。
人が化粧する場合も、その美しさは素肌に左右されるようだから、何事もスタートは大切である。
漆の場合、最初のキズなどは初期の段階で処理しないと、最後まで残ってしまう。非の打ち所がない漆器を作るのは、素人には不可能だということが、だんだん目が肥えてきてわかってしまった。それでも漆塗りを続けるのはなぜだろう。より美しいものを作りたい気持ちがあるからとしか言えない。
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