漆椀 8月27日

懐かしい時を求めて

漆椀というのは、ありふれた感じがするのと、それゆえ「塗り」が下手であることが一目瞭然になるため、作る気になれなかった。

ところが先日、作った猪口で酒を飲んでいる時に、漆で日用品を作るのはいいものだなぁと思った。

初めて椀を塗ってみたくなった。

本来、全ての工程を自分でこなしたものでないとオリジナル作品とは言えないと思うので、どうしたらそれが可能になるか考えてみた。

猪口や椀を削り出すには「木工旋盤」という機械が必要である。木材を機械に固定して回転させ、刃を当てて曲面を作っていく。それがあれば既製品にはない形を作り出すことができるため、他と差別化できる。

ところが木工旋盤は、製品に関する情報が少ないため、比較・選定が非常に難しい。実店舗があるカーマホームセンター、カインズホーム、コメリのオンラインショップで探したところ、国産の木工旋盤(6万円程度)が茨木県内の店舗に一つだけ見つかった。それをアマゾンの口コミ評価で確認したのだが「微妙」で購入を決断できない。

再びネットで調べると、中国製は安くて種類豊富だが信頼できないため、国産に限定すると、価格がぐんぐん上がっていく。信頼できそうな製品は12万円くらいからで、仕事で使っている人はおそらく数十万円以上のものを使っているのだろう。しかしそれとても、製品に関する口コミ情報はほとんどなく、「博打」になってしまう。

もう一つの問題は、木工旋盤を置いて作業する場所である。粉塵が舞う部屋で漆を塗ることはできないから、専用の場所が必要になってくる。

自分で木地をつくることが、どんどん非現実的になってくる。

とりあえず既製品を買ってみようじゃないか。11点で11,500円。安く感じた。

届いた木地を手に取ってみて、これを自分で作るのは大変だと思った。価格は大きな椀でも1,320円と安く、ほんとうにオリジナルな形のものが欲しければ、特注すればよいのではないか。

体調が戻り、一区切りの意味を込めて作業環境を改善した。棚を増やし工具が重ならないようにし、壁を使って工具の在り処がすぐにわかるようにした。

プロが作った木地に向かい合った時、厳粛な気持ちになった。

そしていよいよ椀に下地漆を塗った。木目を生かした塗りで仕上げたいと思いつつ、どこかに自分のオリジナリティを表現したい。新たな自分をスタートさせた。

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