四国遍路の予習

一人旅

四国遍路

四国遍路については、以前より気になる本を見つけては読んでいた。しかし、実際に遍路をするつもりで読むのとそうでないのとは、読み方が大きく異なる。

最近読んだ「マイ遍路」白川密成,新潮新書,2023は「札所住職が歩いた四国八十八カ所」というだけあって良書だった。

雨の中「死」のことが頭の中をめぐり、「僕たちは生きながらにして死を内包している。そしてこの肉体も、今考えているこの思いも、土や雨と同じまったくの自然物なのだ」と考える。それは日々私が感じていることと同じで共感できた。

次に「僕の歩き遍路」中野周平,西日本出版社,2022を読んだ。評判が良く、半年ほど古書を探したがみつからず、書店で取り寄せてもらった。

著者は野宿を基本とし、民宿に泊まったり友人の家に泊まったりしている。イラストとその書き込みが素敵で、何にお金を使ったか細かく記録しているのも参考になる。

若ければ野宿も選択肢に入るが、ちょっと無理かな。出逢ったうち2人が車に轢かれた経験があり、交通量が多い幹線道路沿を歩くのは楽しくないだろうと気持ちが沈む。

お寺に関する宗教的な情報も得ておこうと、「四国八十八ケ所札所めぐり 歩き遍路徹底ガイド」小林祐一,メイツユニバーサルコンテンツ,2024を買う。正確な縮尺の地図には情報がたくさんあって面白い。

遍路に必携と言われている「四国遍路ひとり歩き同行二人【地図篇】」宮﨑建樹,一般社団法人へんろみち保存協会,2022を取り寄せた。

この地図に、他の本の情報を集めていこうと、前掲の本の再読を始めた。「田んぼの中のあぜ道を行く」「山門の脇の細い道を道標に従っていく」「しっとりとした家並み」といったことや、評価が高かった宿、宿の朝食時間や備品などを書き込んでいく。

宗教史についても基礎知識は持っていたい。「詳説 日本仏教13宗派がわかる本」正木晃,講談社,2020が評判通りのわかりやすさ。

空海については「空海」八尋舜右,成美文庫,1995で学習することにする。八尋氏の奥州藤原氏や森乱丸の本を読んで、すっかりファンになってしまった。

瀬戸内寂聴や家田荘子の本についてはその後にする。

四国辺土

そして「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」上原善広,2021を読んだ。「僕の歩き遍路」に幸月こと田中幸次郎のことが少し書かれていて、もっと知りたくなったのだ。

田中幸次郎は大阪府の殺人未遂事件で指名手配されていた人で、俳句を詠みながら四国遍路をなりわいとしていた老人である。そのカリスマ性によりアサヒグラフに取り上げられ、その後NHKのドキュメンタリー番組の主役に抜擢されている。番組は、最初四国だけで放送されたが反響が大きく、全国放送になったことで逮捕に至っている。

著者は「もともと四国遍路というのは、故郷を追われた困窮者が最後に頼る、一種のセーフティ・ネットのようなものであった。今もその伝統は細々ながら続いている」「だから私は、草遍路の幸月に『遍路の本質』を感じとったのだと思う」と述べている。

「(乞食になったのは)たいていはその家族の者がつぎつぎに死んでゆき、年老いて一人身になった者であった。そういう者がいつのまにか村から姿を消したときには、たいてい遍路として四国にわたっていた。老いさらばえた姿をいつまでも村人のまえにさらしていたくなかったのであろう。四国というところは、明治の終わりごろまではそういう遍路や乞食にみちみちたところであった」と、宮本常一「父祖三代の歴史」の一文を紹介している。

かつて遍路は取り締まりの対象であり、歴史的経緯の始まりに、1719年に土佐藩が阿波・甲浦との境に番所をつくったことをあげている。現在の観光要素を取り込んだ遍路とは大違いである。

遍路再考

「四国辺土」の著者同様、私もスタンプラリー的な遍路には違和感がある。

宿を使えば1日の費用は1万円で、歩き遍路2か月60万円。夫婦だと120万円。その意味について深く考えざるを得なくなった。車に轢かれる可能性もあると、ここに来てマイナスが前面に出てきてしまった。

まずは住んでいる近くの寺を歩いて周るということでもいいのではないか、とも思ったりする。

親の介護から解放される見込みが立たない中、考える時間はたっぷりある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました