映画監督の墓参り 10月3日

居酒屋

居酒屋の女将に頼まれ、女将の古くからの友人宅を訪れた。「何度電話しても通じないので心配である。1人暮らしをしている。何かあったのかもしれない」とのことだった。

インターフォンの向こうから友人の元気な声が聞こえると、女将は安心してインターフォンごしに積もった思いを堰を切ったように述べた。

程なく玄関の扉が開き、家の中に招じ入れられた。玄関で少し話をして帰るつもりがリビングルームに通され、1時間以上の滞在になった。

友人のご主人は事業を営んでいたが、数年前に亡くなっている。

遺言に①通夜、葬儀を行わない、②亡くなったことを新聞に載せない、③戒名は無し、④献体するといった項目が書かれていたそうだ。

全てその通りできたのか?質問すると、戒名はつけざるを得なかった、献体は遺体が返ってくるまでの時間が長すぎるためできなかったとのことだった。エバーミングの費用と効果について教えてもらった。

話はあちこちに及んだが、共通の友達の思い出話や健康状態などに関することが多くを占め、私が知っている人の話の際は、その人との関係を述べ、さりげなく「私は怪しいものではない旨」伝えた。

そのうちに映画の話になった。「昔は近くで行われたロケーションを面白がって観に行った。先日は綾瀬はるかなどが来ていたようだが、今はもうそんな元気はないですよ」と友人が笑った。すると女将が「先日、山田洋次監督が寄ってくれましてね。お互いに歳をとりましたねぇと話をしたんですよ」と言った。

帰りの車の中で、先日とはいつのことか女将に尋ねた。数十年前の話をさも昨日のことのように語っているのでないかと疑ってしまったからだ。しかし先日とは、つい最近のことだった。

監督と親交があった映画館主の墓参りの帰りに、ふらっと寄ってくれたとのことだった。その映画館主をモチーフに監督が映画を作ったことがあるくらいだから、墓参りは不思議ではないし、あらためて素敵な監督だなと思ったけれど、女将と話していると、突然びっくりする名前が出てくる。

女将の語りを記録しておくのも面白いかなと思った。

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