少し前に友達から連絡があった。新しく買ったマーチンのギターを見せてくれるという話だった。
2002年製のD-41。
「凄いね、また買ったんだ」と言うと、「3年のローンを組んだよ。そのために働いているようなもんだ」と笑った。
彼は腕のいい大工で人柄もいいので、受注は絶えない。一緒にいる間にも携帯電話が鳴っては対応している。
D-41のボディは飴色に輝き、弦高は2㎜未満のところでぴたっとしている。木が乾燥しているためよく鳴る。マーチンのギターは時の経過とともに木が乾燥して音がよくなっていくのが魅力だ。下世話な話だが、大切に使い続ければ価格は買った時よりも上がるので、資産価値もある。
本棚からアコースティックギターの楽譜を取り出して一緒に弾いて歌う。ハーモニーを奏でる曲を歌う。互いに気持ちが高揚して、気がついたら日没時刻になっていた。
「LIVEやろうぜ」と言われ、「いいね」と安易に答えた。
彼はいくつものグループに所属していて、2時間を超えるステージにも立つベテランのため、彼についていけば何とかなるだろうという安心感がある。
「久しぶりに譜面台を出したよ。俺が譜面台を出すのは本気だと言うことだよ」と言われ一瞬たじろいだが、もう覚悟を決めるしかない。
「1曲ずつ丁寧に合わせていこう。10曲になったらLIVEだ。目標は今年中だ。いいね」と言われ、「それは良い考えだね」と、また安易に答えた。
歳とともに声が出なくなってきたが、これまでは正しい発声をしてこなかったのではないか。正しい発声をすれば以前よりも声は安定して出るのではないかと、根拠なき希望を持った。
よしボイストレーニングだと、ネットで本を探す。
「りょんりょん」という人の本が評判がいいので取り寄せてDVDを見ながらトレーニング。最初の「雄たけび」は、確かに効果がありそうだが、自分の体から出てくる信じられない程の獣の咆哮は、隣近所まで聞こえそうだ。うっかりすると警察や消防に通報されるかもしれない。どうしよう、車を運転中に練習するしかないか…。
彼からの連絡が途絶えて数週間が経っている。油断してこの1週間は練習をサボってしまったが、いつ出番が来てもベストパフォーマンスできるよう準備しておこう。
今日、再スタートだ。
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