筆談 1月19日

懐かしい時を求めて

母が入院して2週間が経った。

一旦は死を覚悟したが、人工呼吸器や酸素吸入器の管も外れ、栄養剤の点滴だけになった。

手術直後から食べることへの欲求は強く、「寿司を食べたい」「退院したら皆で美味しいものを食べよう」と声を絞り出していた。

その後声を出さないようになり筆談になった。

「パスタ 食べに いき」と書いたので「食べに行きたいのか」確認すると、「娘たちに、帰りに食べていけ」と言いたかったようで、財布の在り処を聞かれた。

「おたんじょうび」に首を傾げたが、その日は孫の誕生日であることが判明して驚いた。

「今日の体調はどう?」「ねたいよ」…発熱して体がだるいのだろう。

手術直後しゃべっていたのに声を出さなくなったのが気になっていて、

「声は出せない? なんでだろう?」と聞くと「つかれる」と答えた。

「今食べたいものは?」「水ようかんたべたい おしるこ」

担当医が病室に入ってくると、ホワイトボードをよこせという仕草。医師に伝えたい重要なことがあるに違いない。

「水ようかんたべていいですか」

家族が医師に尋ねると「明日の検査結果が良ければ、水ようかんくらいならいいかもね」と答え、母に伝えた。

甘いものが食べたいようだ。

腸閉塞の原因の一つに「食べすぎ」があるように思え、退院しても心配だが、好きなものを好きなだけ食べるのが幸せかなとも思う。欲があればそれだけ生きられるような気もする。

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