高校生の時から長らく通っていた理容室を久しぶりに予約した。
仕事の関係で急な予約ができないことが続き、別の理容室、美容室へ通うようになっていた。
娘が実家に帰ってきた時に髪を切ってもらうこともあったが、ここ最近は予約の必要がない理容室に通っていた。
予約の必要がないのは利点だが、どの理容師が髪を切るかはその時でないとわからず、楽しい会話の時もあれば、そうでない時もあった。楽しい会話の時はゆっくりカットしてもらいたいと思い、そうでない時は早く終わればと思った。
よくよく考え、楽しい時を過ごそうと思うのであれば、楽しい会話ができる馴染みの理容師の所へ行っうのが、価格は上がっても望ましいと考えを改めた。
相変わらず黄色のカブが止められている。
「このお店いつからやってましたっけ?」「昭和15年くらいからかな」と理容師のお姉さんが答えた。
私の祖母の実家が理容室で、先代はそこで修行した。
車で向かう途中、お姉さんが陶芸をしていたことを思い出した。そうだ、ルーシー・リーを教えてくれたのはこのお姉さんだ。
陶芸について色々と教えていただく。質問の答えを選ぶ時、しばし作業が止まるのがいい。
昔と全く変わらないことに嬉しさがこみ上げる。
窓際の棚にはご自身の作品、友達の作品が並べられている。
こういうのを作れるようになりたいなと手に取った器。
「売ってください。1,000円くらいしか出せないけど」と言ったら、「いいよあげる」と包んでくれた。
私は絵が下手なので、こういうのを見ると感心してしまう。
空の青がいい。
底にも絵が描かれている。美しい。
お姉さんの子も芸術家肌で、他の分野の話を聞かせてもらった。
「どうやって描くのか?」「絵の具は何を使っているのか?」など、聞きたいことが山ほどあった。
時計を見ると1時間半が経っていた。厄介な客だろうが、私の方はワクワクして店を出た。
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